奥大井観光ガイド 『寸又峡温泉』 | ||||||||||
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寸又峡温泉(川根本町) |
★『寸又峡温泉』をご覧になるにあたって | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
観光名所「寸又峡」にある温泉 奥大井の旅というと、「大井川鉄道」を走るSLと、トロッコ列車が人気の「南アルプスあぷとライン」を思い浮かべる方も多いかと思いますが、そんな奥大井の旅の観光スポットとして知られている「寸又峡」にある温泉地が、南アルプスの麓に位置する『寸又峡温泉』です。 「寸又峡温泉」がある「寸又峡」は、「寸又三山」と呼ばれる標高1826mの「朝日岳」、1943mの「前黒法師岳」(まえくろほうしだけ)、1425mの「沢口山」に囲まれた、大井川の支流である「寸又川」沿いに見られる、全長約16kmに及ぶ峡谷で、この渓谷の「沢口山」側にある道路沿いに、この「寸又峡温泉」が開けています。 「寸又峡温泉」と聞くと、御年配の方の中には、1968年2月20日、この「寸又峡温泉」の旅館を舞台に起こった立てこもり事件である「金嬉老事件」(きんきろうじけん)を思い起こす方もおられるかと思いますが、今ではそんな暗い歴史の1ページも、すっかり忘れ去られ、ハイキングを楽しむ家族連れや、南アルプスを目指すハイカーたちで賑わう観光地となっています。 そんな「寸又峡」は、1966年に日本交通公社選定の「新日本旅行地100選」に選ばれると、1983年には、財団法人森林文化協会と朝日新聞社主催の 「21世紀に残したい日本の自然100選」に、そして1987年には読売新聞主催の「新日本観光地100選」にも選ばれ、静岡のみならず日本を代表する観光地として、人気のスポットとなっています。 秘境の温泉地「寸又峡温泉」 そんな「寸又峡」にある「寸又峡温泉」は、原生林に囲まれた山深い自然環境を満喫できるのが魅力の温泉地で、趣向を凝らした露天風呂には、野鳥のさえずりが響き渡り、夜になると満天の星空が頭上に広がります。 「寸又峡温泉」には、静岡市内からは国道362号線にて、金谷からは「大井川」沿いに走る国道473号線~362号線にてそれぞれ向い、合流地点となる千頭以降は、「寸又川」沿いに走る県道17号線にて、向かうことができます。 以前に比べれば、かなり道路も整備されてきましたが、それでも最後に走る県道は、崖崩れなどの危険性もさることながら、道幅が狭く、すれ違えない場所もまだまだ多く残っています。 鉄道を利用しての旅の場合は、SLが走る大井川鉄道を利用して「千頭駅」まで行き、そこから「寸又峡温泉」行きのバスを利用して行くこととなります。 引湯で生まれた温泉街 行き止まりにあり、大自然に囲まれていることから「秘境」と言われる「寸又峡温泉」ですが、その歴史はそれ程古いものではなく、1889年に、上流の湯山地区にあった集落の共同浴場として開かれた「湯山温泉」が、その源とされています。 大間川の左岸に湧いて出たこの源泉は、一説には野生動物がそこに寝ていたことから発見されたとも言われていますが、残念ながら昭和初期の1933年に、ダム開発において水没してしまいました。 その後、3回にわたりボーリング調査が行われ、その結果1957年に新たな源泉が発見されました。 この源泉は、南アルプスを目指す登山者などに利用されていましたが、その利用範囲を拡大すべく、1962年に約3,790m引湯して、現在の温泉街にお湯がもたらされたのが、この「寸又峡温泉」の始まりとされています。 硫黄泉の「美女づくりの湯」 引湯により生まれた「寸又峡温泉」ですが、湧き出たお湯がすばらしく、「美女づくりの湯」として知られる、その独特のとろりとした湯ざわりの「硫黄泉」は、お肌をすべすべにしてくれます。 慢性皮膚病をはじめ、神経痛や関節痛など、その効能も高く、「美女づくりの湯」を求めて、遠方よりこの「寸又峡温泉」に足を運ぶ方も少なくありません。 そんな「寸又峡温泉」は、駅からも遠くアクセスに難があることから、発展的な温泉地というわけではないのですが、逆に自然に逆らわず、ありのままの姿で、昔ながらの奥大井の大自然を満喫できるのが、この温泉地の魅力であり、いつ訪れても想い出の光景がそのまま残っている・・・、そんな楽しみ方ができる温泉地です。 わたし自身、この「寸又峡温泉」には何度も足を運んでいますが、ハイキングコースを歩くたびに、あの時こうだったなぁ~とか、ここで写真を撮ったなぁ~とか、この道で橋まで競争したなぁ~とか・・・、想い出が次々に頭の中を駆け巡ります。 日本全国、どこでも観光地を再訪すれば、想い出が巡るものですが、この「寸又峡温泉」は、想い出の地を再訪して昔を懐かしむ・・・という感覚とはどこか異なり、振り返りながら時間を遡るのではなく、今この瞬間に過去と一体化するような不思議な感覚があります。 今も昔も変わらぬ光景が眼前に広がっているということは、目まぐるしく変化していく現代においては、どこか安心できるものがあり、ほっとできる場所でもあり、それがこの「寸又峡温泉」の変わらぬ魅力なのかもしれません。 リピーターが多いことも納得できるものであり、また派手な電飾広告やコンパニオンなどを置かない純然たる温泉地だからこそ、この魅力が保たれているのかもしれません。 そんな「寸又峡温泉」では、温泉旅館に宿泊して、ゆっくりと時間を過ごしてほしいのですが、どうしても日帰りでこの「寸又峡温泉」の自慢の湯を味わいたい!という方は、町営の露天風呂を利用してみてください。 ある意味一番昔ながらの雰囲気が味わえる場所でもあり、自慢の「美女づくりの湯」が贅沢に楽しめます。 黄色い客車に揺られ「寸又峡温泉」へ! そんな「寸又峡温泉」には、現在では想像もできないのですが、一時期、列車が運行されていた時代がありました。 温泉旅館の宿泊客は、黄色の「すまた」と名付けられた客車に揺られながら、この「寸又峡温泉」を目指しました。 「千頭森林鉄道」と名付けられたこの鉄道は、もともとはダム建設や、ダム完成後の維持管理、伐採林の運搬のための鉄道でしたが、1951年より千頭~尾崎坂間に走り始めると、晩年は短期間ながら「寸又峡温泉」の旅館宿泊客向けに、1963年まで客車を運行していました。 自動車の普及とともに、1968年には全線廃止となってしまったのですが、「寸又峡」に到着した際には気付かなかったこの鉄道の姿を、「寸又峡」を散策していると、飾られている車両や所々残されたその軌道跡より感じることができます。 そんな鉄道の軌道跡をたどる旅こそが、寸又峡最大の見せ場である散策路となっており、このハイキングコース目当てに、毎年多くの方が訪れています。 「夢の吊橋」を巡るハイキングコース 「寸又峡温泉」周辺には、「寸又峡プロムナードコース」をはじめ、「グリーンシャワーロード」、「外森山ハイキングコース」という、3つのハイキングコースが設けられています。 だいたいどのコースも1時間半~2時間もあれば、ゆっくりと散策でき、新緑の季節や秋の紅葉と、四季折々の自然が楽しめ、それぞれ大人から子供まで、気分をリフレッシュするには最高のハイキングコースとなっているのですが、そんな中で一番の人気コースとなっているのが、「夢の吊橋」を巡る「寸又峡プロムナードコース」です。 「夢の吊橋」は、「大間ダム」に架かる全長90m、高さ8mの鉄線のつり橋で、その橋の中央付近で、恋の願いをすると、その恋が叶えられる・・・という、ロマンチックな伝説を持つ橋として、若い女性やカップルに人気となっています。 この「夢の吊橋」を巡るコースは、基本的には一方通行となっているコースで、 「夢の吊橋」を渡りきった後、すぐに「木こり橋」を渡ると、その後「尾崎坂展望台」へ向けて、「くろう坂」「えっちら階段」という名がつけられている304段の階段道を上ることとなります。 なかなかユニークな名前ながら、この階段道は意外に大変で、一気に上りきろうとすると、結構息が上がってしまいます。 途中に、「やれやれどころ」という、これまたユニークな名前の休憩所がありますので、休み休み上りきってみてください。 期待が膨らむ「尾崎坂展望台」 「えっちら階段」を上りきりたどり着いた道を、右手に進んでいくと、程なくかつての森林鉄道のトロッコ列車が展示してある「尾崎坂展望台」に着きます。 みなさんここで、階段道の疲れを癒したり、お弁当を広げたりしていますが、この「尾崎坂展望台」は、昔のことはわかりませんが、特別展望が良いわけでもなく、前述のトロッコ列車を除けば、何があるというわけでもなく、あの苦労はなんだったんだ・・・とお怒りになる方も少なくないような場所です。 わたしも初めてこの場所に来た時には、「展望台」の言葉に期待を膨らまし、さぞやすばらしい眺望が・・・と思っていたのですが、苦労して上ってきたわりには何もなく、騙されたような気になりました。 しかしながら、一年のうち1シーズンだけ、この場所が魅力的に感じられる時があります。 それは秋の紅葉シーズンで、普段はただの山肌でしかない眼前の景色が一変し、様々な色に染まり、とても美しい光景が眺められます。 緑一色だと思っていた山肌には、様々な木々が植わっており、赤や黄色やまるで緑のキャンパスに絵具を垂らしたかのように、ポツポツと点在して色彩の華を咲かせます。 この寸又峡を取り巻く千頭の山々は、ツガ・モミ・ブナ・ケヤキ・ヒノキ・スギなど、針葉樹と広葉樹が混ざり合った混合林となっており、そのためこのような紅葉の景色が生まれます。 古くは天領となっていた山であり、ここから切り出された木材は、大井川にて運ばれ、地元駿河の「駿府城」をはじめ「江戸城」などの築城にも使われたとのことです。 今でも樹齢何百年という木々が残るこの山々の紅葉は、毎年訪れている方のお話では、一年間の気象状況が如実に表れるそうで、同じ色合いに染まることはなく、何度訪れても飽きないとのことです。 わたしが初めて訪れた時と同じように、新緑の季節などにこの「尾崎坂展望台」を訪れ、もう階段を上る気がしなくなっている方は、是非とも紅葉シーズンに、再度チャレンジしてみてください。 わたしがそうであったように、少なくとも上ってきて損をした!という感情はなくなるかと思います。 軌道跡を歩こう! この「尾崎坂展望台」の先は、一般者には通行止めとなっているため、この「夢の吊橋」を巡る「寸又峡プロムナードコース」は、この「尾崎坂展望台」にて折り返すこととなります。 とは言え、先ほど上ってきた「えっちら階段」を戻るわけではなく、左手に見ながら通り越し歩いていくと、前方左手にこれから進むべく「飛龍橋」(ひりゅうきょう)が見えてきます。 「前黒法師岳」への登山道との分岐点となる、この「飛龍橋」の三叉路を左に折れ、橋を渡って道なりに進んでいくと、ぐるりと回って「夢の吊橋」入口への分岐点まで戻ってくることができます。 この道が、かつての軌道跡であり、この「飛龍橋」も、かつて鉄道が走っていた橋で、全長72m、高さ70mのアーチ橋で、この橋の上からは、大間ダムを取り囲む寸又峡の大自然が一望でき、その渓谷美を存分に味わうことができます。 「飛龍橋」を渡りきると、今度は対岸を歩くこととなり、眼下に「夢の吊橋」の姿が見え隠れする「親知らずの険」「子知らずの険」を抜け、再び「夢の吊橋」入口の分岐点へと戻ります。 オフシーズンや、早朝などは問題にはなりませんが、通常は「夢の吊橋」の通行の問題から、一方通行となっていますので、くれぐれも逆行することなく、このハイキングコースを楽しんでみてください。 ハイキングコースを巡る際は、「尾崎坂展望台」に簡易トイレはあるものの、途中に施設らしいものはありませんので、「天子トンネル」の手前にある、「天子の香和家」と名付けられたユニークな外観のトイレで、事前に用を済ましておくことと、夏場は特に飲み物を持っていかれることをおすすめします。 ちなみにこの全長210mの「天子トンネル」も、昔の鉄道のトンネル跡なのですが、このトンネル脇の絶壁は「松枯」と呼ばれ、冬にこの絶壁に沿って「夢の吊橋」方面から、このトンネルを抜ける風を「龍神の風」と言い、この風にあたると無病息災でいられると言い伝えられています。 この他、「グリーンシャワーロード」には、ニホンザルが「寸又峡温泉」を目指して並んで渡る橋・・・ということから名付けられた、全長96m、高さ11mの「猿並橋」(さんなみばし)という吊り橋があり、こちらも自然豊かなコースとなっていますので、時間に余裕のある方は散策してみてください。 「天狗と山伏の湯かけ行列」に「赤石太鼓」 この「寸又峡温泉」では、毎年春分の日には、「春を呼ぶ天狗祭り」が行われ、10月最後の土曜日には、「もみじ祭り」が開催されます。 どちらも「寸又峡イベント広場」をメイン会場として行われ、「観音堂」を起点に、天狗と山伏が温泉街を練り歩く「天狗と山伏の湯かけ行列」や、地元の和太鼓チームによる「赤石太鼓」の演奏、餅つき大会などのイベントが行われます。 「赤石太鼓」は、1981年に地元の町おこしのために発足した和太鼓で、「御諏訪太鼓」を復活させ、複式複打法を確立したことで知られる、和太鼓の第一人者である「小口大八」(おぐち だいはち)氏を師匠として迎え誕生しました。 日本全国様々な和太鼓がありますが、この「赤石太鼓」は、発足時わずか13名しか団員がおらず、消滅の危機を幾度となく乗り越えながら、小学生から中学・高校と、地元の子供たちに受け継がれ、2008年3月には、石川県で行われた「第10回日本太鼓ジュニアコンクール全国大会」にて、静岡県代表として初出場ながら、見事特別賞を受賞するまでとなりました。 そんな地元の期待を担う、自慢の「赤石太鼓」の音色にも酔いしれてみてください。 また「天狗と山伏の湯かけ行列」には、観客も松明を持って参加できますので、是非とも一緒に温泉街を練り歩いてみてください。地元の方々が温かく迎えてくれますよ。 日帰りではもったいない! 「寸又峡」の良さは、よく特別何があるというわけではない、ただありのままの手つかずの自然が残されているところだ!と言われます。 「寸又峡温泉」に宿泊し、まだ観光客がいない朝一番に散歩をしていると、そのことを実感できます。 静寂の中に時折小鳥のさえずりが聞こえ、グリーンシャワーをいっぱいに浴びながらの散策は、周囲の美しい景観も相まって、実に贅沢な時の流れに感じられます。 「寸又峡温泉」は、「秘境」とは言われつつも、充分日帰り旅行ができる温泉地ではありますが、ここはゆっくりと宿泊して、奥大井の大自然を満喫してみてください。 きっと時間をかけた分以上に、身も心もリフレッシュできますよ! |
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