星★聖 への Q&A
Q:星★聖さんは、どちらにお住まいなのですか?
静岡県です。眼前に駿河湾を望む地に住んでいます。
Q:いつ頃から「旅」をするようになったのですか?
家族旅行ではなく、明確に「旅に行く!」という意識で出かけたのは中学生の時。五色沼や秋田の角館、男鹿半島への旅でした。駅のホームやバスの車中で横になりながら、電車とバスを乗り継いでのかなりハードな旅でしたが、この時に生まれ育った都会とは違う“日本”を発見し、子供心に魅了された気がします。この時から、かなり無謀な計画を立てていたんですね(笑)。
Q:「旅」の手段は何が多いのですか?
基本的にクルマです。好きなところへ、好きな時に行ける魅力は大きいですね。ただ北海道だけは、フェリーにてマイカーで行く時と、飛行機でレンタカーを借りる時があります。鉄道が嫌いというわけではなく、むしろ鉄道の旅には好感を持っています。関口智宏さんみたいな鉄道の旅はサイコーですよね。
ただ現実的にはクルマでの移動が多いため、現地でわざとクルマを置いて路面電車に乗ったり、トロッコ列車に揺られたり・・・なんて旅をしています。鉄道じゃなきゃ味わえない旅のカタチは大切であり、趣がありますからね。駅弁も楽しみですし!
ただ、バスだけは全く利用しません。立山・黒部アルペンルートなど、他に交通手段が無い時は別ですが・・・
Q:年に何回くらい「旅」に出るのですか?
これはわからないですね~。日帰りや近場でも自分の中では「旅」と呼べるものもありますし、どこからが「旅」としてカウントするのか、自分が考える「旅」と一般的な「旅」とに、認識の差がある気がしますしね。
泊まりで出かけるものと限定するならば、5~10回くらいでしょうか?
でも、前日の深夜発という0泊2日というのが多かったりしますし・・・。ただ泊まりで行く旅に出る時は、一回出かけると長いことだけはハッキリしています。だいたい1週間~10日になります(笑)。
Q:自分の「旅」のスタイルというのはありますか?
ひと言で言うならば、風林火山!?でしょうか・・・。人と逆に時間を使うことが多いかもしれません。ポイントは早朝・深夜です。人が寝ている時間に移動すれば早く長距離移動できますし、まだ起きて旅館でのんびりしている頃に観光を楽しめば、観光地を独り占めでき満喫できたりします。それに思わぬプレゼントもあったりします。通行料が無料になったり、昼間は入れないところに入れたり。自然相手の観光地では間違いなく早朝が勝負ですね・・・山は特に!
それに写真撮影を考えると、人が映り込まないようにしなくてはいけないので、自然と朝一番を活用するようになります。
ただ、だからといって旅館でのんびりしないわけではないんですよ。旅館を楽しむ時は、それこそ午後3時にチェックインして一番風呂を楽しんだりして、とことん旅館に居座り!?ゆっくり時を過ごします。比較的暇な時間帯なので、仲居さんもゆっくり話をしてくれたりします。すべてメリハリをつけて楽しむことですね。
Q:今まででいちばん良かった「旅」は?
これは難しい! う~ん・・・やっぱり答えられないですね。どれもこれも想い出深く、また感動がありましたからね。本当に無理です。ごめんなさい!
ただ答えにはなりませんが、ガイドブックには載っていない場所を見つけたり、自然が織り成す思わぬ光景に巡り合ったりした時の方が、やはり感動は大きいですね。ファインダーをのぞく先に思わぬモノが見えたり、太陽光が不思議な世界をつくり上げたり、とてつもないスケールで虹がかかったり・・・そんな光景に出合った場所は、特別に記憶に残っています。
Q:では、今までで一番印象的な「旅」の出来事は?
これも一番と言われると答えられないのですが、高野山に登った時に、時間切れで下る道路が閉鎖されてしまい、真冬に雪の中で車中泊をするはめになったことがあり、時間つぶしにパチンコ店に行ったんですが、高野山にパチンコ店があったことにもビックリしましたが、自分のまわりで打っている人がみんな、そのまんまお坊さん・・・という光景にビックリしました。あの光景は異様でしたね~、台を見ないで周りばかり気になって、全くパチンコどころではなかったですよ(笑)。
あとは、佐世保でクルマを走らせていた時に、知らずに交差点を直進してオレンジラインを超えてしまい、米軍基地(アメリカ領)に入ってしまったことがありました。身柄を拘束され調書を取られ、この先どうなるのかとビビりましたよ(笑)。
日本の警察官に助けてもらったのですが、大統領選挙投票日だったこともあり、ピリピリとした空気が張り詰める最悪のタイミングだったようです。結構解放してもらうまで大変でした。英語が全くダメなもので・・・。無事開放され、クルマで突っ込んでくる車両をパンクさせる路上の突起物の上を、ゆっくり超えて日本領に戻ってきた時には、正直ホッとしました。今となってはよい想い出です。
Q:「旅」をすることについて、こだわりをお持ちですか?
小学生の時に、京都市内を観光バスツアーで回ったのですが、この時子供心にもっと観たい!と思った観光地で・・・平安神宮だったんですけど、ガイドさんにせかされ渋々バスに戻ったことがありました。それ以来、自分のペースで観光地を巡りたい・・・という思いが強くなり、時間に追われるツアー旅行は、社員旅行以外していません。
基本的に「旅」をする時には、細かいスケジュールはたてません。今日はどこまで行けるのか先のことはわかりませんし、どこに感動が待ち受けているかもわからないので、宿泊先もどこで長居するかわからないことから、手前でも先でもどっちにでも転べるような場所を選び、フレキシブルに対応しています。
そんなこんなで昔は宿泊先はすべて当日予約だったんですが、今は2~3日前くらいに予約しています。今でも当日予約が理想なんですけどね~。昔は宿がなくても車中泊でOKでしたが、さすがに今はね(笑)。
もちろん目的地周辺のリサーチはしますし、必ず寄りたいという候補地は決めて行きますが、基本は現地現物勝負ですね。旅先で出逢った人の情報も重要ですしね。
旅立つ前に全日程が決まっていて、時間通りに巡って行く!・・・なんていう「旅」は、わたしには考えられません。というか、それは「旅」ではないですね。旅先での感動やリフレッシュの源は、時間に束縛されないことであり、時間からの開放ですからね。
Q:意識的に「旅行」と「旅」を区別していると伺いましたが?
ちょうど今お話したのですが・・・全くの自論なんですけど、感覚的には「旅行」はその場所を楽しむというよりは、一緒に行く家族や友達などのメンバーと楽しい時間を過ごし、美味しいものを食べたり遊んだりするという感覚で、主役は一緒に行くメンバーなのですが、「旅」はその場所に触れ、何かを感じ、それにより自分の中に何かを生み出していく感じで、主役はその場所であり自分なんです。
それにより「旅行」の想い出は、どちらかというと誰と行ったとか、あの時こんなことがあったよね・・・という、仲間と共有する想い出が中心なんですが、「旅」の想い出は、巡った場所の記憶や個人的な感動が中心となります。
それに「旅行」は明確なスケジュールがあり、「明日朝〇時出発だから、今日は〇時に寝よう!」とか、「バスの出発が○分だから、あそこだったら行けるね!」というように、時間を逆算し削って行動していく感じなのですが、「旅」はいい夜だったら夜更かしもするし、長く居たいと思えばボーっとしたりもう一泊したりもする・・・と、先へ先へと時を積み重ね生み出していくイメージなんです。
自分の中では「旅行 ⇔ 旅」、そして「時間 ⇔ 時」という言葉が対照に位置しています。「旅行」と「旅」はその主役が異なり、「時間」と「時」では今を境にベクトルも異なり、「時間」が限られているイメージなのに対して「時」は無限なんです。
ただそんな自論を振り回してもしょうがないので、雑誌やホームページなどでは一般的なみなさんの認識とズレがあってはいけないので、特殊な意味合いで使用しないように心がけています。あくまでも自分の中だけの話です。じゃないと、ただの変人ですからね(笑)。
Q:「旅」を続けていて気付いたこと、自分自身変化したことはありますか?
そうですね、旅を重ねていくとその場その場を楽しむことにプラスして、いつしか比較する楽しみがでてきましたね。例えば、ここの温泉のお湯はどこどこの湯に似ているとか、あそこのお城の方が天守への階段が急だったとか・・・、全く違った視点では、山陰のおばちゃんは軽でもすごく飛ばして走るなぁ~とか(笑)。何気に比較するようになりました。
それと日本三景とか三名瀑とか、一個一個「日本三大〇〇」みたいなものを制覇していく楽しみも加わりました。
自分自身については、体力的に老いてはいますが、果たして成長してるんでしょうかね~(笑)。自分自身の変化についてはよくは分かりませんが、全国を巡って行く中で、日本の原風景や伝統・文化・匠の技など、ひとつひとつ目の当たりにしていく中で、少しづつ自分の中にもそのような文化を理解できる心が養われてきたように思えます。そのことがまた、旅先で出逢う方々とのコミュニケーションを深めていっている気もします。
同時に日本の原風景や伝統・文化・匠の技など、それらの良さや心地よさも感じるようになってきました。これが今こうして日々活動する原動力にもなっており、日本を感じ、日本を再発見する旅に出てほしい!という想いにつながっているのかと思います。
Q:今後やってみたい事、今考えていること、夢とかあったら教えてください?
日本を巡る旅も、それをみなさんにお伝えすることも、今までやってきたことをさらに高め継続していきたいですね。そして、現在少しづつではあるのですが動き出しているのが、どうやったら日本を感じる日本再発見の旅ができるのか?、また旅をもっともっと楽しむ方法など、今までの旅の経験からわたしが感じとったモノを基に、みなさんにお話する講座などにも取り組んでいきたいと思っています。公民館や観光センターなどでの市民講座なども積極的にやっていきたいですね。
目的ごとに、こんな旅はどうですか?という観光地のおすすめもしているのですが、どうすれば旅が今以上に楽しくなるのか? そのためにはどういった知識を持つと良いのかなど、最低限知っておくと同じ旅が3倍楽しくなる知識などを、将来的にはまとめあげたいとも思っています。一冊の本になれば最高なんですが・・・、まぁ夢は大きくですね(笑)。さらに大きさついでに言えば、地元のローカル局のコメンテーターや旅の案内コーナーとかもやってみたいですね。大きすぎましたかね!?(笑)。
ただ実際に旅についていろんなお話をすると、みなさん本当に喜んでくれるんですよね~。そうしたみなさんが観光地に行かれて、あれこれお土産話を聞かせてもらうと、それだけで嬉しいわけで、結構今ハマっています(笑)。みなさんの前でも、お話しする機会があるかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。
あと駿河湾エリアについて言えば、ここ何年か地元の観光資源の掘り起こしをやっているのですが、もっともっとみなさんに雑誌やテレビでは登場しないような静岡の良いところを紹介させていただき、今までとは違った切り口で静岡に訪れてもらう「キッカケづくり」が出来ればと思っています。そうそう夢と言えば、最終的には「駿河湾観光大使」ですかねぇ~、なんて(笑)。
2010年11月24日掲載(筆者:三浦優子)
富士通エフサスの取材記事より
第8回 日常から離れた旅先で入る温泉で身も心も温かに!
季節が夏から秋に移り、山々が紅葉に彩られ、「旅行」を計画する人も増えてくるシーズンです。特に寒さを感じるシーズンになると温泉にゆっくりと浸かり、疲れをとりたいと考える人も多いのではないでしょうか。しかし、温泉は全国各地にあり、旅館もたくさん存在します。自分で旅先を決め、旅館を選ぶとなると何を基準に、どこを選べばよいのか困ってしまう人も多いでしょう。そこで今回は、静岡県の温泉マイスターでもある星聖氏に、旅や温泉を楽しむコツを聞きました。
日常とは違う空間に出向く転地効果が心と体をリセット
-- 「旅に出ることが最高の癒し」と考える人がたくさんいます。忙しくて旅に出ることができないので、「計画を立てるだけでも気分が変わる」という意見もあるくらいです。
旅に出ることにより、日常生活から解放されます。非日常の環境に身を置くことにより、五感が刺激を受けるからです。都会の窮屈な生活に適応していた体が、旅先の自然豊かな環境に適した体へと変化を起こしはじめます。逆に、農村でのんびりした生活に馴染んだ体が、大都会の近未来的な社会に適した体へと変化を起こす・・・。そんな「転地効果」が旅にはあると思います。個人的には、この「転地効果」が心や体をリセットする上で、すごく大きなウェイトを占めていると感じています。
-- 旅の中でも「温泉」というのは、どのような効果があると思われていますか?
リゾートマンションタイプや一般住宅の民宿にあるようなユニットバスの温泉は例外として、いわゆる露天風呂があるような旅館の温泉に入ることを前提としてお話させていただきます。
まず、自宅のお風呂と比べると開放感がありますよね。湯船や周囲の景色、空気や泉質、太陽や星空など、非日常の空間に自分がいるという環境の違いから湧いてくる内分泌系や自律神経、脳の活性化が生む転地効果が最大の温泉の効果なのではないかと思っています。
転地効果は、最初にお話しした通り、旅そのものにもあるものですが、こと温泉に関してはこの効果が大きいように思えます。さらに温泉は、今日一日の旅路を振り返り記憶にとどめたり、明日からの旅路に夢を膨らませたり、そんな心や頭、気持ちの整理ができる時間を生みだしてくれる、気持ちにさせてくれる空間でもあります。温泉で過ごすひとときが、旅そのものをより充実したものへと変化させていく気がします。
-- 星さんは、「温泉マイスター」という資格をお持ちだそうですが。
観光地の取材をしていた際、たまたま伊豆の友人が携わっていた「伊豆市まるごとTO-JI博覧会」をとりあげることになりました。その中に「温泉マイスター」の養成講座があり、興味があったので、受講したのがキッカケです。
私が受けた講座は、1泊2日で、専門の講師を招いての講義と、入浴法の実体験などを受け取得しました。入門講座に続き、翌年また1泊2日の専門講座を受けて、一応カタチだけは「温泉マイスター」らしくなることができました(笑)。
実は、「温泉マイスター」の資格は、都道府県により取得講座の内容も位置づけも異なります。例えば、新潟県の妙高高原にある赤倉温泉には「温泉ソムリエ」という資格があり、群馬県の草津温泉には「温泉観光士」という資格があります。
その中で、静岡県の「温泉マイスター」は、静岡県の貴重な資源である温泉を、健康づくりや健康なまちづくりに活用するために、健康づくりや温泉に関心がある方を対象に、温泉の効用や効果的な入浴方法、また健康の基礎知識、さらに地域の文化、おもてなしの心で伝えることができる知識や技能を身につけていただこうと県が企画したものでした。しかし、温泉そのものの専門知識を得ることのウェイトが低くなっているなどの意見があり、現在養成講座は行われていません。
私自身は、だからこそ一層、静岡県の「温泉マイスター」として恥ずかしくないように、そして静岡県が考える温泉マイスター像を体現すべく、今は頑張り時だと思っています。温泉そのものの専門知識でカバーできない、温泉の魅力や効能にこだわってアピールしていきたいと思っています。
「癒し」のチェックポイント1
●日常生活とは違う場所に出向く転地効果が心身を癒す要因に
●温泉に入ることで、転地効果はさらにアップ
自分の健康状態を把握しながらリラックスして温泉に浸かろう
-- 温泉に入る際、注意すべきことはあるのでしょうか?
私は医者ではありませんので、医学的に見た温泉入浴法については、私がここで語ることではないと思います。ただ、お医者さんに注意されている以外の細かいところまで気にして温泉に入っていたら、かえってリラックス効果が薄れるように思えます。
かけ湯をすることは家のお風呂でも同じでしょうし、体への負担を減らす入浴方法も、半身浴がよいのは温泉も家庭も同じです。ただ、入浴は一日3回までと言われますが、どうしても出立前にもう一度入りたいということもありますよね。その場合、私はちょっとでも入ったほうがいいと思います。入らないで後悔し、ストレスを感じるのは本末転倒じゃないかと考えます。
入浴時間についても、一回当たり10分程度と言われますが、眼前に広がる露天風呂からの眺めを楽しみたければ、湯あたりしない程度にヘリに腰かけゆっくり眺めればいいのではないかと思います。むしろ、時計を見ながら、時間に追われて温泉に浸かるほうがストレスになって身体に悪いでしょう。
とはいえ、最低限のことはわかっておくことが前提です。お医者さんにかかっている方は、事前にお医者さんに注意点を聞いておいたほうがよいでしょう。温泉は、家の真水のお風呂とは違うという意識だけは常に持っておく必要があるかと思います。温泉にはいろんな意味で体に効く要素が多いということで、真水のお風呂に入る感覚でいては困るということです。
-- マニュアル通りに気にしすぎるのも問題だけれど、お風呂と同じ感覚で利用するのもトラブルが起こる可能性があると。
湯疲れの仕方も違いますし、特に皮膚への影響が異なります。温泉では上がり湯でシャワーを浴びないというのが一般的な温泉入浴法ですが、硫黄泉などは肌荒れの原因にもなるので、肌の弱い人はシャワーで洗い流して、保湿剤を塗ったほうが無難かと思います。
それから、仕事で夜遅くに宿に到着し、夕食前に慌てて温泉に入る方がいます。あれは体に良くないので止めたほうがいいと思います。胃の血管が収縮してしまい、結果として食欲を低下させてしまうということもありますが、疲れている時や、気分が高揚している時に温泉に入ることは、体調を崩す原因となり危険だからです。
江戸時代などは、歩き疲れて宿についた日には危険なので温泉に入らなかったと言われており、入浴は体調を左右するものですので、現代においてもそのことは理解しておかなければと思います。
-- 疲れたから温泉に入るという発想でしたが、逆に疲れすぎて温泉に入ると体調を壊すというのは興味深いお話です。
ちょっと角度を変えて、「上手に温泉に入るコツ」というかひとつ例をあげますと、名湯の高級旅館の露天風呂を満喫するには、立ち寄り湯で、宿泊客が食事をする18時~19時あたりを狙って行くと、ガラガラだったりします。宿泊客よりもよい環境で温泉を満喫でき、しかも格安でそれを味わえます。ただしその後は時間的に、素泊まり旅館かビジネスホテル泊まりになったりしますが(笑)。
そういう裏技的な方法を使いますと、低価格で高級旅館の露天風呂を楽しむこともできます。きわめて個人的な意見なのですが、「旅行」というのは一緒に行ったメンバーと時間を共有して楽しむことだと思っています。それに対して「旅」というのは、自分や場所が主役だと思います。
わかりにくいのですが、旅行というのは、あらかじめ全体像をつかんでいて、大体の感動の予測値があり、それを上回った時に喜びや感動を感じていくものです。それに対して、ひとつずつの出会いに小さな喜びや感動を覚えつつ、全体を通してさらなる喜びや感動を得られるのが旅かなと思います。
家族で温泉に出かけるのであれば、せっかくなので高級旅館を予約して、ゆっくりとおいしいものを食べる時間を共有することに楽しさがあります。それに対して思い立って友人と二人で温泉巡りをする、一人で目的地を決めずに車を走らせるといった場合には、高級旅館に立ち寄って、露天風呂に入って、でも宿泊はビジネスホテルという落差を楽しむとか。もしかすると、空いているだろうと狙った時間に、立ち寄った露天風呂に人がたくさんいたなんていうハプニングも含めて楽しめるのが旅ではないかと思っています。
「癒し」チェックポイント2
●温泉を利用する際はマニュアルに縛られすぎずに楽しむ
●ただし、温泉は普通のお風呂とは違うので、自分の健康状態をきちんと把握し、疲れすぎている時や興奮している時には入浴しないといった配慮も必要。
自分の目的にあった温泉地や旅館を選ぼう!
-- 全国各地に様々な温泉地があります。上手な温泉地の選び方などがありましたら、教えてください。
「何を期待しているのか、」、「どう楽しみたいのか」により人それぞれ変わってくるかと思います。ただ、ひとつだけ言えることは温泉地により向き不向きがあるので、最低限それを知って訪れることです。
簡単な例をあげますと、漁港で山菜料理を食べるのはナンセンスですし、オーシャンビューが売りのホテルで山側の部屋に泊まるとガッカリですよね。それと同じで大勢で騒ぐのに向いている温泉地もあれば、のんびりと楽しむひなびた温泉地もあります。目的に合った場所を選んでください。
例えば、和倉温泉のような温泉地では、料理やおもてなしなど旅館そのものを満喫するのが一番の楽しみ方です。こういう温泉地では早めに宿へ行き、滞在時間をたっぷりとって、のんびりと過ごすのがいいかと思います。また宿泊プランも少し贅沢にしたほうが楽しめます。
逆に、城崎温泉や鳴子温泉などは、旅館に閉じこもっていては楽しさが半減します。外湯巡りに温泉地の楽しみがあり、夜の温泉街を下駄に浴衣で歩き回るのも楽しいですし、下足番の仕事ぶりに驚かされます。早朝には、温泉街を駆け抜け一番札をゲットするのも楽しいです。
旅館から外に出なくては、温泉地を充分に楽しむことはできません。宿の外の楽しさで言えば、下呂温泉や黒川温泉などのような湯巡り手形がある温泉地でも同じようなことが言えます。温泉旅行をするのであれば、事前にどういう温泉地なのかを知ってから宿選びをしたいものです。温泉地なりの楽しみ方がわかれば、どこにお金をかければより楽しめるのかもわかります。
-- そうやって具体的な楽しみ方を紹介していただくと、大変わかりやすいです。これまでは写真を見て、「なんとなく」選んでいました。
旅館選びも、目的に合わせて選ぶといいと思います。混浴がダメなのに、混浴露天風呂が有名な老舗の高級旅館へ泊まり、部屋風呂で済ませているようでは、温泉地を上手に楽しんでいるとは言えません。むしろ、露天風呂付きの離れの宿などでゆっくりされたほうがいいですよね。
私自身は、いわゆる湯そのものや泉質についてはどうかとなると、それほどこだわりは持っていません。それではなぜ、旅の中で温泉が大きな存在となったかと言いますと、真冬の知床で、星空を見ながら入った雪の中の露天風呂でした。温泉そのものの楽しみや評価は、季節や天候、ロケーションや混雑状況、聞こえてくる音や空気など湯船に浸かる際の環境により大きく左右されます。自分だけのとっておきの時間を見つけることができるのが最高ですね。
「癒し」チェックポイント3
●温泉地や旅館は特徴を持っている
●旅の目的に合った温泉地や旅館を選ぶ
--本日はありがとうございました。
筆者:三浦 優子(みうら ゆうこ) フリーライター