温泉入門「天然温泉とは?」

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♨ 天然温泉とは?

天然温泉とは? 温泉入門 天然温泉とは?

源泉かけ流しかどうかということと同じくらい、その響きにみなさんが敏感になっている言葉が「天然温泉」だ。天然温泉と聞くと、ほとんどの方が自然のまま、源泉のままのお湯が楽しめる…と思いがちだが、これが一番の落とし穴で、実際にはこの天然温泉という言葉の定義は、みなさんのイメージとは程遠い内容となっていて、以前より問題視されてきた。

そもそも天然温泉とは、1976年に 日本温泉協会温泉法 で定めた源泉を利用している施設に表示を認めたもので、湧き出た源泉がその後どのようにされようとも、元が温泉法で定められた源泉であれば、すべて「天然温泉」と表示してよいということになっていたのである。

しかしながら「天然」という言葉本来の "自然のままの状態" という意味と、実際には手が加えられたお湯であるという現実とのギャップが問題となり、加水の有無やかけ流しか循環式かなどの温泉の利用形態に関する表示の改正が2003年4月に行われ、「天然温泉表示制度」が後から追加導入されたわけだ。


≪ 天然温泉表示制度 ≫
〇「源泉名・引湯方法」の表示
〇「源泉所在地」の表示
〇「泉質・泉温」の表示
〇「源泉の利用形態」の表示
 ・循環…完全放流式、放流一部循環慮過式、循環慮過式などの表示
 ・加水…加水の有無の表示 有りの場合は、その目的の明記
 ・加温…加温の有無の表示
〇5項目について、適正度・自然度の目安を、三段階で表示
 ・源泉・引湯…源泉の湧出状況や引込み距離と引湯方法等を審査
 ・泉質…源泉が、温泉なのか、さらには療養泉なのかを審査
 ・給湯方式…湯舟において、放流式か循環式か等を審査
 ・加水の有無…加水の有無と、温度調整のためか等を審査
 ・新湯注入率…1時間あたりの新湯量を湯舟の容積比により審査


これにより「天然温泉」を名乗るためには、正式に利用許可を受けなければならず、許可を受けるためには温度や含有物質の量などの審査があり、クリアした施設にだけ日本温泉協会が認定した天然温泉の浴場だという証である「天然温泉表示看板」が発行されることになった。

温泉利用証には、給排湯方式や加水・加温の有無、添加剤についての項目などがあり、それにより今までわかりにくかった 温泉の利用形態 が把握できるとともに、一般人でもどのような状態の温泉なのかがわかるようになった。

だがこれは利用者の誤解を解くことはできても、「天然」という言葉の根本的な解決にはなっておらず、一度広まった「天然温泉」という言葉はもはや日本温泉協会だけの専有物ではなく、未だにこの言葉は一人歩きを続けている。

まだピンとこない方のために繰り返しておくが、「天然温泉」=「源泉100%かけ流し」というのは論外で、温泉法第2条に規定された源泉は、例外なくすべて天然温泉であり、許認可さえ受ければ源泉がある温泉施設はすべて天然温泉というわけだ。

「天然温泉」は、単に温水に厚生労働省が承認した天然鉱物由来の薬剤などの温泉成分を加えた人工温泉」に対する用語であるというだけで、ここに「天然」という言葉本来の "自然のままの状態" という意味は無い

この問題を解決するには、利用者が正しい知識を身につけるしかないのが実状だ。

ちなみにその後、2007年10月に「温泉法」が改正され、日本温泉協会の「天然温泉表示制度」とは別に、法的に罰則を伴う「温泉利用事業者が掲示しなければならない項目」として、


≪ 温泉利用事業者が掲示しなければならない項目 ≫
①源泉名
②温泉の泉質
③源泉及び温泉を公共の浴用又は飲用に供する場所における温泉の温度
④温泉の成分
⑤温泉の成分の分析年月日
⑥登録分析機関の名称及び登録番号
⑦浴用又は飲用の禁忌症
⑧浴用又は飲用の方法及び注意
⑨温泉に水を加えて公共の浴用に利用する場合は、その旨及びその理由
⑩温泉を加温して公共の浴用に利用する場合は、その旨及び理由
⑪浴槽等で使用された温泉を再び浴槽等で使用する場合は、その旨(ろ過を実施している場合は、その旨を含む)及びその理由
⑫温泉に入浴剤を加え、または温泉を消毒して利用する場合は、入浴剤の名称または消毒の方法及びその理由


が定められた。これにより温泉事業者に、加水や加温・循環・入浴剤・消毒の有無などの掲示義務が課された。

また義務ではないが「自主的に掲示することが望ましい項目」として、


≪ 自主的に掲示することが望ましい項目 ≫
・加水・加温・循環及び入浴剤や消毒処理の程度
・加水する場合の、水道水・井戸水・沢水等の種別
・源泉の状況(自噴・動力揚湯の別・湧出量・掘削深度など)
・温泉利用施設及び浴槽の清掃状況
・湯の入替頻度
・浴槽の湯口等における飲用の適否等の情報


の温泉利用者への積極的な情報提供のお願いも行われ、より正しい情報が伝わりやすい環境は整えられた。

だがこれは「温泉法」の話であり、日本温泉協会が推奨してきた「天然温泉表示制度」とは別であり、天然温泉という言葉の一人歩きの解決策には至っていない



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