温泉入門「かけ流しとは?」

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♨ かけ流しとは?

かけ流しとは? 温泉入門 かけ流しとは?

「美人の湯」「美肌の湯」などという言葉とともに、温泉選びをする上で多くの人が気にし、よく耳にする言葉が「かけ流し」だ。常時新湯の温泉を湯舟に流しいれ、オーバーフローして排出された湯を再利用しないというのがかけ流しとされている。

完全放流式 と言われ循環式と対をなすものだが、果たしてこの言葉をどれだけの人が正しく理解しているのだろうか。

この言葉には、実に多くの落とし穴が潜んでいる。そのひとつが「かけ流し」と「源泉かけ流し」「温泉かけ流し」を同じモノと捉えている方が多いということだ。ただ「かけ流し」というだけでは、源泉そのものをかけ流しているのか、消毒剤や入浴剤などの添加剤が加わったお湯をかけ流しているのかすらわからない。

そして一番多い間違いとして、「源泉かけ流し」=「源泉100%かけ流し」と、2つを同義語と思っている方が実に多いということである。

一般的な定義としては、


源泉100%かけ流し
常に浴槽に新しい温泉が注がれ溢れ出ている状態で、流れ出た温泉を再利用せず、加水も加温もしない「源泉100%完全放流式」のもの。

源泉かけ流し
常に浴槽に新しい温泉が注がれ溢れ出ている状態で、流れ出た温泉を再利用せず、適温にするために、必要最小限の加温だけする「源泉完全放流式」のもの。

温泉かけ流し
常に浴槽に新しい温泉が注がれ溢れ出ている状態で、流れ出た温泉を再利用せず、加水・加温を行う「温泉完全放流式」のもの。


となる。

かけ流しの100℃近い鮮度抜群の高温泉でも、適温調整で加水すればそれは温泉かけ流しであり、逆に15℃のかけ流しの冷鉱泉を加温したものは、源泉かけ流しというわけだ。

「源泉かけ流し」は、かつては加水・加温の有無もさることながら、施設によりまた利用者によりそのニュアンスや使われ方も曖昧だったが、現在では加温に関しては公正取引委員会も成分変化が少ないという観点から可能という見解を示しており明確に定義されている。

そのため多くの施設が加温していても「源泉かけ流し」と謳っており、この言葉だけで多くの温泉ファンが飛びつくのだから、利用しない手は無いのが現状だ。

そこで源泉そのものを何もせずに湯舟へと注ぎこんでいることを強調すべく登場したのが「源泉100%かけ流し」なのだが、この言葉はまだまだ広く認知された言葉ではないため、前述したようにほぼ「源泉かけ流し」と同義語のように誤認されている。

ちなみに 温泉の鮮度 という点からすると、「源泉100%かけ流し」で引湯ではなく自家源泉で、自噴泉であれば尚良く、さらにそれが湯舟のすぐ横から直接注がれていたり、湯舟の底から自噴していれば最高の鮮度となる。もっと言えば、お湯の回転率がよく、露天風呂よりも内湯の方が酸化が進まず理想の温泉と言えるだろう。

だが実際には、源泉を100%そのままの状態で利用している施設はわずか10%足らずとされ、それが自噴泉だったり湯舟の底から湧いている…となるとほんの一握りであり、理想の温泉に巡り合うことがいかに難しいことなのかがわかる。




循環式よりも かけ流し不衛生!?

かけ流しとは?

そしてもう一つの落とし穴が、「かけ流し」がかえって湯舟の湯を悪くしているというケースだ。

湯舟への温泉成分の付着による石化やレジオネラ菌の発生問題などにより、お湯の交換や湯舟の清掃、塩素などによる殺菌など、衛生管理上の問題 が騒がれているが、かけ流しなら衛生管理上の問題がないのか…というと、実はそうでもないのだ。

かけ流しに対して、湯舟から溢れ出た湯を再利用しているのが「循環式」で、その方法は様々なのだが、再利用という言葉の響きより一見循環式の方が衛生上悪いような気がするが、一概にそうとも言えないのである。

環境省から2005年3月に、温泉利用者向けに出された通達にも、

『…「循環ろ過方式」か「源泉かけ流し方式」かについては、どちらの方式が優れているということは一概には言えません。個々の温泉の入浴時の状況は、新鮮な温泉の供給量、利用者数や浴槽の衛生管理状況などによって異なるからです。また、適切な維持管理に基づく循環ろ過装置の使用は、温泉資源の保護、衛生的な入浴状態の確保の観点から重要な手段であることも理解しておく必要があります。…』

となっており、温泉の供給量によっては「かけ流し」は湯舟の大きさや利用者数に対して回転率が悪くなることもあり不衛生である…と、暗に指摘している。

自宅のお風呂で、家族みんなが入った後に湯舟に浮かぶモノを見れば、お湯の回転率が悪いとどうなるかはすぐに理解できるはずである。また小さな浴槽に大勢の人が入っていれば、それなりに汚れもひどいわけで、単純に「かけ流し」か「循環式」かということだけで、どちらが衛生的かということは決めきれないことが理解できる。

むしろ衛生的な入浴状態の確保という観点からすれば、「循環式」の方が安定的で確実とも言える。

衛生管理上の問題は、新鮮な温泉の供給量、湯舟の大きさ、利用者数により大きく影響を受けるわけで、皮肉にもテレビや雑誌で話題となれば多くの人が同じ湯を求め訪れるわけで、これらがどう作用しているのかは、その施設の人間にしかわからない。

もしテレビや雑誌で話題のスベスベのpH値の高い人気の美肌の湯が、回転率が悪く不衛生な湯となっていたら…と思うとゾッとする。鮮度が無くず~っと循環しているような湯舟も考えようだが、衛生上どちらの温泉が良いか…となると、見極めは難しい。

もうお分かりかと思うが、ひとえに「かけ流し」と言っても、その意味するところは広範囲にわたり、また皆さんがイメージするような滝のように次から次へと鮮度抜群の温泉が注がれているような湯舟ばかりではない。

人気さゆえに毎日小さな浴槽に大勢の人が出入りし、おまけに湯口から注がれる源泉はチョロチョロ…というような温泉施設は、皆さんが抱く「かけ流し」のイメージとは程遠く、源泉本来の効果は疑わしいばかりでなく、衛生上も問題なのである。

時間軸を無視して、ある一点で湯口から注がれる温泉を科学的に比較するならば、それは湧出時からの劣化が少ない「かけ流し」の方が良いのは当然だが、それだけでは語れない、データがすべてではない温泉の奥深さがここにあり、大きな大きな落とし穴となっているのである。

2007年10月の温泉法の改正により、定期的(10年ごと)な温泉成分の分析とその掲示が義務付けられるとともに、温泉利用者へ開示される加水や加温・循環・入浴剤の有無などの温泉情報が増やされた。

だがそれで、すべての「かけ流し」に潜む落とし穴が見つけられるようになったわけではない。



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