世界一小さな公園の見どころ

ベンチに座ると足は公園の外に出ちゃう!?

普通にベンチに座ると足は公園の外に出る!? そんな公園あるのか…と耳を疑うような公園が、ここ長泉町にある。

訪れたことがある人の中には、いやいやベンチに座り膝を折りたたみレンガにつま先立ちで足をのせれば、ギリギリ飛び出さずに座れるでしょう…という人もいるだろうが、そもそも体が敷地外に飛び出ているわけで、そんな姿勢ではとてもじゃないけど寛げないし休憩どころではない。

何を話しているんだ…と思われるだろうが、そんな公園が2024年にギネス世界記録に登録された長泉町の『世界一小さな公園』だ。どの公園？公園の名称は？と質問が飛んできそうだが、『世界一小さな公園』というのがこの公園の正式名称だ。

えっ!?と思うのが普通なわけで、ギネス認定前から実に36年間も『世界一小さな公園』と名乗ってきたわけだ。では何でそんなことに…

実は公園ではなかった、世界一小さな公園！

この長泉町の『世界一小さな公園』が造られたのは、令和でも平成でもなく昭和時代末期の 1988年 だ。

当時町の職員で現在町議会議員となっている下山和則氏が、オレゴンへ行きパンフレット片手にやってきた同僚のみやげ話の中で、世界最小の公園とされていたアメリカのオレゴン州ポートランドにある直径約61cmで面積0.29㎡の円形の「ミル・エンズ公園」の存在を知ったのが、この公園が誕生するキッカケとなった。

それならば…として、町道建設に伴いできた余剰スペースの有効活用として誕生したのが、この遊び心のある『世界一小さい公園』だったというわけだ。

1988年の建設当初から「ミル・エンズ公園」を強く意識して世界一小さい公園を目指し造られたものだったのだが、当時の長泉町の方針としては、ギネス申請する意向はないとされた。

しかも残念なことにギネス認定が見送られただけでなく、『世界一小さな公園』の名前とは裏腹に、当時の長泉町の見解としては "道路施設の一部" という位置づけでしかなく、正式な公園にも認められなかった。

それ以降 ポケットパーク として近隣の人々には親しまれてきたのだが、私みたいに "世界一" の名に惹かれて訪れる物好きな人を除けば、足を運ぶ人はまずいない場所だった。

まさかココだけが公園だったとは…

ひょんなことからその存在を知り始めて訪れた時、私は大きな誤解をしていた。

写真はギネス世界記録登録前のものなのだが、以前は公園周辺!?が緑色にペイントされていた。そのため、まさかレンガ内だけが公園だとは想像だにできず、緑色の三角形の土地全体が公園だと認識していた。

それでも通常の公園のイメージからすればかなり狭い土地だったので、これが世界一なんだ…と、変に納得している自分がいた。

現在はギネス世界記録登録にあたり公園周辺の舗装がやり直されていて、通常のアスファルト色になっているので、レンガ内が公園だとすぐに認識でき私みたいに勘違いする人もいないだろうが、逆に昔以上に街に同化していて、Googleマップなくして発見するのは難しくなったように思える。

今はスマホ片手に誰でも迷わずにたどり着ける時代だが、インターネットもナビも無い紙の地図を片手に訪れていた時代なら、間違いなく探し回っていただろう。

"ギネス世界記録"への道のり

そんな『世界一小さな公園』が ギネス世界記録 に認定されるまでの道のりは、決して簡単なものではなかったようだ。ギネス世界記録に登録されるための条件こそ、

①最低 "5年間" 存在していること
②国や自治体の "法律" によって公園として認められていること
③証人立会いのもとで、有資格者の "測量士が実測" すること

と、①は既にクリアしており、②③も今回は長泉町として動き出していたので比較的事務的に対応できるのかな…と勝手に思っていた。それ以上に、町民の意向や周囲の雑音、申請手続きや費用の問題の方が気になっていた。

職業柄始めて訪れた時から観光資源としては面白いなぁ～と感じていた私は、呑んだ席などで長泉町に住む知人に、埋もれててもったいないよね～と話したことがあったのだが、「あんなの…」と失笑されたのを憶えている。

町と言えども長泉町だけでも広いわけで、町民でも知らない人は多く、まして静岡県民はおろか県外の人で知る人は皆無に近い状況だった。

それを物語るように、町おこしも兼ね2024年にギネス世界記録認定に向けたプロジェクトが始動しても、地元ですらそれほど盛り上がっていたわけではなく、7月1日～9月28日まで クラウドファンディング型 ふるさと納税 で申請費用を捻出しようと目標金額 250万円を掲げ全国規模で募集を行ったものの、たった18人の支援だけで達成率9.3％の23万4000円しか集まらないという惨憺たる結果だった。

これじゃ～大丈夫か…と老婆心ながら心配していたが、ほぼ計画通りに着々と準備は進んでいたようで、2024年12月21日に現地にて証人立会いのもとに有資格者の測量士による実測が実施されると、公園指定も含めすべての条件がクリアされた。

またこの時、長らく50cm四方で 0.25㎡ とされてきた公園の面積が、実測では一辺が50cmに満たず面積が 0.24㎡ となった。それに伴い公園横にあった上の写真の「世界一小さな公園 0.25㎡」と刻まれた石柱も撤去され、前述の緑の舗装がアスファルト色へとやり直された。

今思えば、これが公園の外に建っていたので、緑色の部分を公園と認識してしまったのもあったと思う。でも0.25㎡という数字をちゃんと計算して理解していれば、すぐに誤解に気づいたとも言えるのだが…。

それはさておき推測の域を出ないが、36年の歳月の間には地震や地殻変動もあり、またレンガも風雨にさらされ、時には子供たちがレンガに躓いたり蹴飛ばしたりしたかもしれないわけで、おそらく建設時は50cmだったのではないか…と思ったりもする。いやいやそもそもそこまで気にせずアバウトに造っていたのかもしれない…なんていろいろと想像を巡らしてしまうのも、この『世界一小さな公園』の魅力なのかもしれない。

労わってあげてね！

話が逸れたが、「ミル・エンズ公園」の0.29㎡より0.05㎡小さいわずか0.24㎡の世界で最も小さな公園として、 2024年12月25日 に ギネス世界記録『The smallest park』として正式に登録された。翌2025年2月25日には、ギネス世界記録の認定証の授与式が長泉町役場で行われた。

報道を通じて、ギネス世界記録公式認定員の藤渕文香さんより「厳正なる審査を行った結果、長泉町の世界一小さな公園は、0.24㎡で見事ギネス世界記録に認定されました…」の言葉が発せられた瞬間、プロジェクトに関わった皆々の努力が遂に実を結び本当によかったなと素直に喜べたとともに、これで晴れて名実ともに『世界一小さな公園』として、堂々と世界に誇れる公園になったなと思った。

正直、大の大人が車の通りも多いこの公園を訪れ写真を撮ったりベンチに座ったりするのは、かなり勇気が要るもので冷たい視線を感じるものだった。通りすがりの子供が、ちょっかいを出すような感じで立ち寄るくらいの公園で、わざわざこの公園を目指し訪れる人などまずいなかったので、少し行きやすくなったかな…などと考えたりもした。

晴れてギネス認定され周りの見る目も変わってくると思うので、今後はそれ程抵抗もなく楽しめることだろう。ただし訪れる際には、当たり前だが公園内にも近くにも駐車場は無いので、路駐をして近隣に迷惑をかけたり、大勢で訪れて道路にはみ出して通行人や交通の妨げとなったりしないように注意してほしい。

そして何より世界に誇れる『世界一小さな公園』を労ってあげてほしい。

損傷など問題が起き、三角地が防護柵で囲まれでもしたら公園としては本末転倒なわけで、くれぐれもレンガを蹴飛ばしたり植栽を踏みつけたりしないように注意してほしい！

いつの日か記録が破られる時が来るかもしれないが、長泉町の『世界一小さな公園』がこれからも今まで通り自然なかたちで愛され続けていくことを切に願う。

ギネス世界記録認定のれっきとした公園だよ！

同僚のみやげ話がキッカケとなり1988年に造られ36年後の2024年にギネス認定された、わずか0.24㎡の公園だよ！

ベンチに座ると足は公園の外に!?

切株の椅子のような公園のベンチに普通に腰掛けると、自然と足は公園の外に飛び出ちゃうよ！

近隣に迷惑をかけないように！

くれぐれも蹴飛ばしたり植栽を踏みつけたりしないように！ また路駐もダメだよ！

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